【21.拘束】

「ねぇ、今日はどれがいいと思う?」
「うーん、これかな?」
「サンキュ」

クローゼットに沢山あるそれを、あなたは毎朝、私に選ばせる。
まるでそれが当然とでも言うように自然な流れで。
あなたは私の手にそれを握らせ、自分の前に立たせた。

身長差があって、私の手はあなたの肩にようやく届くほど。
見上げるあなたは、いつも通り私にされるのを待っている。

それにため息をつき、あなたの肩にそれをかけ、前に回す。
左右の長さを調整して、私はネクタイを結ぶ。

「アゴあげて」
「ん、……ちょっと締まる……」
「あっ、ごめん。これくらい?」
「あーうん。そんな感じ」

手早く結び、片側を引っ張ると締まりすぎたのか、あなたの顔が歪んだ。
その表情に結び目を引っ張ってゆるくする。
一度身体を離して見る。形も長さも完璧。
毎朝の習慣だ。上達しないはずがない。

「はい、できたよ」
「うん、ありがとう」

額に落ちる口付けに、毎日私が締めるネクタイ。
それは、私だけに許された特権で、私が確かめる愛の証。
私だけがあなたを縛れて、あなただけが私を縛れる。
子供っぽい独占欲を満たすための儀式だ。

「私だけ?」
「うん、お前だけ」

私の欲しい言葉をくれたあなたに、私も口付けを返して。
私は最後に、ネクタイピンをとめた。

(08.07.21)






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