【31.告白】

「ごめんなさい」

付き合ってください、そう告げた僕への返事。
校舎裏に呼び出しての告白劇は、あっけなく幕を閉じる。
居心地が悪そうに佇む君に、諦め切れない僕は縋りつくように問うた。

「あのさ、理由を聞かせてくれない?」
「え……?」
「自分が何でふられたのか理解してないと、あきらめもつかないから」

謝罪だけじゃなく理由が欲しい。
でないと、次に進むにしろ、諦めないにしろ、先に進めない。
この恋――初恋に、終止符を打てない。

そう思う僕の言葉に、君は目を逸らす。
まるで僕とは目を合わせたくもないとでも言うように。

「好きな人がいるの?」
「違う……」
「……俺が嫌い?」
「違うっ!!」

怒鳴るように、けれど小声で言い返した君に面食らう。
普段から温厚で怒ることのない君のそんな態度に驚く。
今の質問のどこが気に障ったのかが分からない。

「じゃあ、どうして?」
「……」
「教えられない、のかな?」
「……じゃないから……」

しぼり出すように返された答えは、低い声だった。
思わず聞き返す僕を一瞥して、君は目を伏せる。
その様子は、今にも泣き出しそうな幼子に似ていた。

「私が欲しいのは、彼氏じゃないから……」
「……」
「欲しいのは彼氏じゃないんだ。理解者なの」

さっきの表情とは一変、淋しそうに笑って、僕を拒絶する君は、普段とは雰囲気が違った。
いつも人の中心にいて、誰とでも仲の良い君。
それが今は、全身で周りを否定して、全力で僕の接近を拒んでいた。

「だから、ごめんね」
「……」
「あなたとは付き合えない。……他の人とも」

見る者の胸を痛くするような微笑を残して、踵を返す君。
その背中は、淋しさに震えていて、なお潔かった。

(08.08.08)






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