03.青春の味 青春の味…。 例えば、部活帰りに食べたアイスの味とか、母親が作ってくれた弁当に入っている玉子焼きの味。 どれ青春の味とは言えるだろうけど、やっぱりあれが一番なんじゃないだろうか。 そう、初めてのキスの味。 * * * 「愛してる」 やむ終えない理由で置いていく彼女の第一声がこれ。 耳の錯覚かと思ったけど、真剣な彼女の顔を見ると冗談でも空耳でもないと知る。 「愛してるから、遠く離れたとしても大丈夫よ」 そういう彼女の瞳には言葉とは裏腹に大粒の涙が。 本音を言えば置いていきたくなんてない。 でも、これからのことを思うと連れてなんて行きたくない。 なんて矛盾だろう。 「でも、早く帰ってきなさい。じゃないと、あんたのことなんて忘れてしまうかもしれないわ」 瞳に涙をためながら彼女は気丈にも笑ってみせた。 そんな彼女が愛しくて恐る恐る肩に触れると、彼女は自ら胸に飛び込んできた。 「大丈夫。だってあんたなんだから」 「帰ってくるから、絶対に」 その言葉にやわらかく微笑んだ彼女がいじらしくて、さっきより強く抱きしめる。 「信じて待ってるわ」 そう言って彼女は首に手を廻した。 「でも、少し不安なの。だから、証をちょうだい」 体に触れる彼女の体温も、その言葉を紡いだ彼女の唇も全てが欲しい。 そして、高鳴る胸の鼓動に急かされるように、彼女の顎に指をかける。 彼女がゆっくりと目を閉じたのが視界の端に移った。 そうして、初めての口づけを交わした。 どんな味だったかはよく覚えていない。 なんか、こういう初々しいのもいいですね。 |