あなたと片恋#5

4.後悔




「もう、別れよう」
「……どうして?」

唐突に告げられたはずの告白に、あたしは抑揚なく返事をする。
そんなあたしの態度が解せないのか眉根を寄せたあなたに、あたしは冷淡な視線を寄越した。

「他に好きな人でも出来た?」
「……」
「図星。ふーん、そうなんだ」

気まずそうに視線をそらすあなたに、興味がなさそうにふーんと呟く。
なんとなく予想していたことだけどやっぱり面白くない。
浮気されたなんて騒ぎ立てるつもりはなかったけど、それでもやはり嫌だと思った。

「嘘つき」
「舞衣」
「あたしだけが好きって言ったのに」

あなたの部屋で、あなたのベットで、あたしの部屋で、あたしのベットで。
何度もあなたはそう言ったのに、それも全て嘘だったのだろう。

これだから男は信用できない。
口八丁手八丁でいつも騙されてるあたしが、次こそはと選んだ相手が有紀さんだったのに。
その人にさえも裏切られて、あたしはいま絶望の淵だ。

「あれは嘘だったんでしょ」
「そんなことっ……」
「言い訳なんて聞きたくないっ!!」

大声を上げて、耳をふさぐ。
首を左右に振ってイヤイヤと意思表示をした。

「あなたなんて……あなたなんか好きにならなきゃよかった!」

大っ嫌いだ。
中途半端に優しくして、それでいて手を離す有紀さんなんて。
大嫌い。

「バイバイっ!」

キーケースから合鍵をぶった切って、有紀さんに向けて投げる。
勢いよく当たったベチッという音が耳に響く。
けれど、あたしはそれに構わず、その部屋を逃げるように去った。






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2009.02.21