【エイプリルの場合】

「おかえりなさいませ、ご主人さ……ま」
「ユノちゃん、頑張ってる?」
「はい、もちろんですよ。何か食べますか?」
「うふふ、そんな野暮なこと聞かないでよ」
「え……?」

その瞬間、エイプリルの背後に黒いもやが浮かんだ気がした。
けれど、ユノはそれを気のせいだと思うことにする。でないと怖いからだ。

「閉店間際のメイド喫茶。従業員も少ない上に、ほとんどお客もいない。これはチャンスよね」
「あ、の…エイプリルさん?」
「さて、今日は早くあがっていいって言われてたから迎えに来たのよ」
「あ……そうなんですか?」
「ほら、はやく準備してらっしゃい。おいしいご飯用意してるわよ」
「わー、嬉しい。じゃあ、準備してきますねー」

先ほどのことなど忘れて無邪気に喜ぶユノにエイプリルは妖しく笑う。
店の奥からユノと入れ違いに出てきた知り合いに妖艶に微笑んだ。

「お前が一番策士じゃないか……」
「あーら、何を言うかと思ったら。ユノちゃんをヘルプで貸してあげてるんだからいいじゃない」
「お前はあんな純粋無垢な子を騙して、心が痛まないのかっ!」
「人聞きの悪いわねー。恋の駆け引きって言いなさいよ」
「そんな凶悪な恋の駆け引きなんてっ……」
「あれ? どうかしたんですか?」
「なんでもないわよ。さぁ、行きましょうか?」

支度を終えて、帰ろうとするユノに話を遮られる。
さりげなくユノの腰に手を添えてエスコートするエイプリルに呆れることしかできない。

「はい、お疲れ様でしたーー」
「また来るわねー。そのときはコーヒーの一杯でもよろしく」

図々しい友の言葉にうな垂れる。突っ込みたいことがたくさんあった。
だが、一番突っ込みたかったのはこれだった。

「貸してあげてるって……お前のじゃないだろう」







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2008.04.02