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「50回目の花冠」 ジュピターの作り出した幻の花畑で、ユノは一人佇んでいた。 聞こえてくる草を踏む音に、振り返る。 「プラエ……?」 「正解……」 予想したとおり、背後にいたのはプラエだった。 微笑む彼の後ろには、険しい顔をしたジュピターがいた。 「どうしたの、ジュピター?」 「……」 ユノの手元にある花冠を見て、さらに顔を顰める。 これは、ユノが二人にプレゼントしようと、作っていたものだった。 一面に花開く四葉のクローバー。 幸せの証。それを手に入れられないことをユノは知っていた。 「何を思い出した?」 「……何のこと?」 きょとんと、ユノはさも何も知りませんという顔で惚ける。 場に沈黙が落ちた。 永遠に続くような静寂の中、最初に根負けしたのはユノだった。 「はぁー。隠し事は出来ないね」 仕方ないなーと言わんばかりの呆れた顔をしたユノは、次の瞬間には真剣な表情をしていた。 その瞳の奥には、かすかな怯えと疑心、そして彼らへの信頼があった。 「あの後、みんなどうしたのかな?」 「……」 「ねぇ、プラエは知ってる?」 首をかしげて答えを待っているユノに、二人は沈黙しか返せなかった。 時間が経つにつれ顔に不安を宿すユノを見て、ジュピターは嘆息と共に促す。 「メルクリウス……」 「……分かってる、ジュピター」 プラエはユノに近づいて、その手を彼女の額に掲げた。 訝しがる彼女に哀しく笑いかけるプラエの右手から青い光が漏れる。 ![]() 「お眠り、ユノ」 「えっ、プ、ラエ……」 眠るように気絶したユノの手から、花冠が落ちた。 ジュピターはそれを拾い、撫で上げる。 それはまるで愛しい人の頬を撫でるかのように丁寧で、痛みを伴った動作だった。 「何回目だ……」 「今回で……50回目、だよ」 花に埋もれるユノはどこか神々しくて、触ることを躊躇う。 それでも、このままここに居るのも、彼女の健康上良くない。 たとえそれが精神体だとしても、プラエにはユノをそのまま放っておくことはできなかった。 起こさないように細心の注意を払って抱き上げる。 その華奢な身体は子供のプラエの体型でも抱えることが出来た。 「みんな、ね……」 ユノはあと何度繰り返せば、忘れてくれるだろうか。 全てを忘れて、ただ僕らの元にいてくれるのだろう。 あの質問に答えるわけにはいかない。 もし返答をしてユノがあちらに帰りたいといっても帰ることは出来ないから。 彼女の器はもう機能していない。 その残酷な事実を告げるには、自分の覚悟が足りない。 「今は安らかな眠りを……」 額に唇を落とす。 触れた感触がくすぐったいのか、ユノは身じろぎをした。 その表情はどこまでも穏やかで、プラエはユノを抱き上げたまま空を仰いだ。 目が覚めて、君は何も覚えていないだろうけど――。 僕はまた君に出会う。 |
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*あとがき* 要反転 |