:注意:

偽物度高し。苦情は心の中で。
感想は大歓迎。
傾向はシリアス甘。淡甘。
甘々なものは書けません! 笑って許して!




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01 歳の差(アルベルト)

「……」
「……」

ちらちらとこちらを伺う視線。
マーキュリーの宿主、ユノ。

「どうかしたか? 何か足りないものでもあれば持ってこさせるが」
「いっ、いいえ、お気遣いなく……」

突然話しかけられたことに慌てる彼女は見ていて面白かった。
面白い? 自分がこんな感情を持つこと自体、久しい。
だが、面白いと思うことに不快感を感じなかった。
むしろそれは心地よいもので、好奇心を煽る。

ユノのほうを見てみれば、ちょうど視線が合う。
首を傾げた後にハッと気づいたかのように俯くその仕草に、ある人物を彷彿させた。

「クローディア……」

彼女よりも若く、とてもじゃないが似ていないユノになぜだか目を離せない。
容姿は可愛いほうだろう。性格は少し素直すぎるきらいがあるが、嫌いなタイプではない。
しかし、恋愛対象としては程遠く、そうでもないのなら何故気になるのか理由が分からなかった。

「ハスラーさん? どうかしましたか?」
「何でもない。君が気にすることじゃない」
「……?」

自分の気持ちだが、どうも解せない。
どうしてこんな娘が気になるのか。
なにがこんなに惹き付けるのか。

「今日は……」
「え?」
「仕事が終わるまで、待っていなさい」

それが分かるまで、答えを見つけるまで。
この子の面倒を見るのも悪くない。





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02 背伸び(ルート)

「何やってるの?」
「……何でもいいだろ」

見下ろされている。しかも、自分の好きな女に。
こんな屈辱的、かつ悔しいことがあるだろうか。

「ねぇ、ルート。牛乳は?」
「今朝、全部飲んだ」
「え、一リットルもっ!?」

飲んでも飲んでも一向に身長は伸びない。
本当にカルシウム摂って、身長なんて伸びんのか?

「しょうがないな〜。買って来るね」
「……俺も行く」

言って早々部屋に帰るユノを横目に、俺は財布とコートを持った。
しばらくして部屋から出てきたユノは手袋をして、コートを着ていた。
首にしたマフラーの形が歪んでいる。

「ユノ、マフラー曲がってる」
「え、嘘」

コートと財布をテーブルに置いて、ユノのマフラーを直す。
こんなときにも見下ろされている。
その事実に異様に腹が立った。

「ほら、出来たぞ」
「あ、本当だ。ありがと、ルート」
「どういたしまして」

でも、礼を言い微笑むユノの表情を見て、怒りも収まっていく。

今はまだこのまま。
いつか二人の身長が並ぶとき、俺たちはどこにいるのだろう。
そんな不安を抱えたまま。二人で。





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03 最初は憧れだった(ジェラルド)

最初はただ憧れだった。
あの日、あの庭で起きたこと。怖くなかったわけじゃない。
でも、その後見せた完璧な笑顔の裏に隠された、少しの怯えに気づいてしまったから。
寂しそうな瞳に、時折見せる陰に次第に惹かれていったんだ。

「ユノ、どうかしましたか?」
「……ううん、何でもない」

何でもない。分からない。自分にそう言い聞かせる。
そうでもしないと、歯止めが利きそうになかったから。
いま止まらないとあとはもう、走り出してしまうことが分かっていたから。
憧れが憧れ以上になる前に。

時を数えて、気持ちを止めて。





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04 会話探し(ディアス)

「あの、その……」

静寂。無言。イコール、耐えられない。
そんな雰囲気を醸し出すこの空間で、ようやく声を絞りだす。

「……何だ?」

返ってきた声が存外冷たいものであっても、めげちゃいけない。
耐えろ。耐えるのよ、自分!

「ごめんなさいっ……!」
「何がだ?」
「だから、その、あの……」

しどろもどろになる。言いたいこと、伝えなくちゃいけないこと。
自分の中で何度もシミュレーションしたのに、どうしても形にならない。

「だって、ディアスの大事にしてる物だってしらなくて」
「さっきからいいって言ってるだろう。もう謝るな」

その言葉が拒絶に聞こえて。
もう自分とは話したくないと言外に告げている気がして。
何故か涙が出た。

「うっ……んっ、ひっく」
「ユノ、どうしたっ、泣いて……」
「だからぁ、食べちゃってごめんなさいっ!」

心配するようなディアスの声に、一層泣けてくる。
自分の不注意とはいえ、あんな大切なものを食べてしまっただなんて!

「マ、マリカさんから……送られて、きたものだったんでしょ?」
「……そうだ。でも、怒ってない、怒ってないから。泣くな」
「だって……」

ポンポンと頭を撫でる感触に目を瞑る。
子ども扱いされている気もしなくはないけど、今は心地よかった。

「本当に、怒ってない?」
「あぁ、もう怒ってない」
「……もうってことはさっきまでは怒ってたってことだよね?」
「う……」

嘘のつけないディアスが目をそらす。
沈黙が再び場を支配した。

(そして、ふりだしへもどる)





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05 甘えて、甘えられて(イサ)

「……」

機械的な音と共にシステムが終了する。
ファーストコンタクトは上々。
2年間、頑張ってきた甲斐があった。

「ユノ……」
「……イ、サ?」

ゴーグルを取って眼を開けて、現実に戻ってきて最初にイサに会う。
その状況は本来ありえないものだけれど、心配されていたんだなと人事のように思った。

「……プラエに会えたよ、イサ」
「おめでとう、ユノ」

甘えるように抱きついてくるイサを受け止める。
ポンポンと背中を叩いていると、腰に回された手が徐々に上がっている事に気づいた。

「ちょっ、イサ、どこ触って」
「いいじゃない。僕ら、恋人同士でしょ?」
「それにしたって……」

こんな真昼間から、こんな所でっ!?
冗談じゃない!!

「ちょっと、イサ、駄目だって」
「いいの、いいの」
「ほらっ、皆が見てるっ〜〜」
「見てるほうが悪いんだから、いいじゃない」

そういう問題じゃないのよーー!
文句を言おうとした唇は、まもなくイサに塞がれた。


* * *


「……平和だね、アルベルト」
「……この状況をそう言えるのか、お前は」
「若いっていいな……」
「……」
「あぁ、空気に糖分が溶け出しそうだね」
「……」


* * *


「あれをどうにかしろ」
「あ〜でも僕は被害を受けたくないですし、先輩どうにかしてください」
「ユノが……」
「ルート君……」
「一回、殴ってくる」
「おい、ウィル。あれも止めろ」
「えっでも、人の恋路を邪魔する奴は何とかって言いますし、ね?」
「ここは研究室だ。機材が壊れたら、お前が弁償するか?」
「……善処します」





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06 背中が遠すぎる(ウィル)

出会った頃から思えばどこか遠くばかり見ている人だった。
いつもその硝子製の眼鏡で何を見ているんだろうって気になってた。
でも最近は、同じものが見ていたいと思うようになったんだ。

知りたかった。同じものを見てみたかった。
だから、聞いた。ただそれだけ。
なのに――

『君には関係ない』

そんな言葉で私を拒絶した。
はっきりとした拒絶はむしろ潔いほどに。
心を覗かせてもらえないふがいない自分に、涙が出た。

「夢……」

頬に手をやってみると、そこは湿っていた。
どうやら寝ながら泣いていたらしい。

夢で見たその黄色い背中は、近づく者を、私を拒絶した。
冷たい瞳で私を突き放して、振り返らずに一人で暗闇に去っていったのだ。
伸ばした手は届かなかった。
そして、それは彼が拒絶する限り、届くことはないのだ。

だから、彼の引いたこの境界線を飛び越えることも出来ない。
飛び越えていいのか。飛び越えてはいけないのか。
答えは未だ見つからない。





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07 劣等感を刺激され(エイプリル+ルート)

「あら、ルート。一人で来るなんて珍しいわね」
「……」
「珈琲でも飲んでいきなさい。安くしとくわ」
「……金とるのかよ」
「当たり前じゃな〜い」

バチンとウインクをして、エイプリルは珈琲を作り始める。
次第に漂ってくる独特の香りに心が落ち着いてくる。

「はぁ……」
「ため息つくと、幸せ逃げるのよ?」
「……幸せ、か」

出された珈琲に口をつける。
その味は今の自分の心境のようにどこか苦かった。

「俺……家出ようかな」
「……」
「これ以上、ユノと居るの、きつい……」

好きすぎて。好きは溜まっていく一方で、でも別れは静かに近づいてくる。
離別の恐怖に怯えるばかりで、この一緒に居られる時間に浸ることも出来ない。
それこそ、幸せが何だかすら見つけられないでいる。

「だから、ユノちゃんを置いていくの?」
「……」
「自分で幸せにしてあげられないから、一度手にしたのに不安だから放り出すのね?」
「そう思うなら、お前が幸せにしてあげればいいだろ!?」

ユノと同じ人間で。同じ寿命を持っていて。
別れの不安を常に抱えていなくてもいいくせに。

「でもね、いつか別れてしまうのは人間同士でも変わらないのよ?」
「……」
「そんな不安を抱えながら一緒に居るのは、なんてつまらないことかしら」

悟ったように、全てを知っているかのように語るエイプリルが眩しくて。
それと同時にひどく気に障った。

「お前、ムカつく……」
「悔しいなら、早く大人になりなさい」
「……分かってるよ」

噛んだ唇から血が滲む。
こんな所は人間と同じで、それがやけに腹立たしかった。
寿命も何もかも全て同じだったらいいのに。





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08 一緒にいるのが怖くなる(ジェラルド)

「ごめんね、つき合わせて」
「いいえ、僕も楽しかったですから」

申し訳なさそうに謝るユノに微笑む。
その笑みに安心したのか、彼女は笑顔になった。
普段と変わらぬ柔らかい笑みに、微かに走った胸の痛みに気づかない振りをする。
感情が自分という殻を破って、溢れ出てしまいそうになる。

それを必死に押さえながら、後悔を繰り返す。
近づきすぎた。でも、もう離れられない。

「そうだね、久しぶりに楽しかった……」
「ユノ……」

けれど、これ以上共に居るのが怖いのだ。
この幸せが、あんまりにも幸せすぎて……。
怖い。壊れそうで。壊しそうで。

いっそのこと、壊してしまった方が楽になれるのかもしれない。
自分の手で、壊れる前に、壊してしまえば。
貴女が去っても、心は壊れないかもしれない。

「ジェラルド?」
「……はい、どうかしましたか?」
「怖い顔……」

ユノは両手で私の顔を包み、親指で頬を伸ばす。
見下ろすユノの真剣な顔とその不思議な行動に戸惑う。

「しかめっ面してる……」
「そんなこと、ないですよ?」
「……嘘つき」

包んでいる両手に引き寄せられたと気づいたときには、掠めるように頬に唇が触れていた。
その感触を確かめる間もなく、ユノは走り去る。

一筋、涙の軌跡を残して――





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09 ずっとこのままでいたい(レイン)

「あ〜、落ち着く」
「ちょっと、レイン。苦しい……」
「ごめん。これでどうだ?」
「うん、平気」

後ろから抱きしめてその抱き心地を存分に堪能する。
首に顔を埋めて空気をたくさん吸い込むと、ユノの香りがした。

「ユノ、いい匂い……」
「あ、うん、いい匂いだよね、これ」

ユノは自分の髪を一房掴んで、匂いを嗅いだ。
彼女の髪の毛をかき上げて、そのうなじに鼻先を押し付ける。

「うん、すげーいい匂い」
「あ、もう、ちょっと、くすぐったいって!」

クスクスと笑い後ろを振り向いたユノと視線がぶつかる。
お互い硬直する。熱い吐息が顔にかかった。
間近で赤く頬を染め見上げてくるユノを可愛いと思った。

「ごごめんっ、」
「お、俺こそごめん」

バッと勢いをつけて、ユノは立ち上がり背を向ける。
突然離れた熱が何だか寂しい。

「あ……じゃあ、私帰るね」
「え、もう帰るのか」

ユノが来てまだ何時間も経ってない。
数週間ぶりに会ったっていうのに、ユノは俺といたくないのだろうか。
俺はもう少し、ユノと居たいのに。
出来れば、ユノとずっと二人で。

「こんなゆっくりできたの久々だろ。もう少しここにいろよ」
「ででも、ルートが心配してっ」

立ち上がったユノの手を引き、背後から強く抱きこむ。
自分より高い体温を感じて、ひどく安心した。

「他の男の名前なんて聞きたくない」
「レイン……」
「ずっとここにいろよ……」

呟く声に、答えるように手が握られる。
それを俺は強く握り返した。





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10 何もかもを越えて口づけを(ルート)

「どうしたの、ルート?」
「え……、何が?」
「だってほら、水出しっぱなし」

ユノに言われてやっと気づいた。
目の前の水道から、水が止め処なくジャバジャバと流れていた。
慌てて石鹸のついた手を洗って、蛇口をひねる。

「……」
「ルート、大丈夫? 少し休んだら?」
「えっ……あぁ、そうする」

夕食後、ユノはリビングでのんびりと読書を、俺はその横で皿を洗っていた。
ユノは手伝うと言ったのだが、手伝われると状況が悪化するので全面拒否。
そして、今に至る。

「部屋で休む」
「うん……本当に大丈夫?」
「心配するな。明日になれば治る」

先にベットに入っていた俺の後ろからユノも部屋に来る。
背もたれに枕を置いて、起き上がる。
傍らの椅子に座ったユノはとても心配そうな顔をしていて、心配されていることが少し嬉しい。
俺の額に手を当てて自分の額と温度を比べているユノを見て、少し不安になった。

「熱は……、ないみたいだね」
「ユノ……」
「どうかした? 何か持ってきたほうがいい?」
「俺、ここ出て行ってもいい?」

不安だ。
あの事件以来安定していた心が、熱のせいかまた揺れている。
俺がどうしたってユノを置いていくことに罪悪感で胸が痛む。
ある日突然、熱を出してそのままってことだってありえるのだ。

先に俺が死んで悲しむであろうユノを思うと、今すぐにでも俺はここを去るべきなのかもしれない。
でも、動けない。ぬるま湯のようなこの現状にひたすら浸っていたかった。

「……どうして、そういうこと言うの?」
「俺は、俺はっ、お前を置いてっ」
「私は……ルートと一緒にいたい。だから、行かないで」

その言葉が聞きたかった。
引き止めて欲しかったから、また口にした。
行かないでってユノが言ったら、俺がここにいる理由が出来るんじゃないかって。
引き止められたから仕方なくここにいるって自分に言い訳が出来る。

俺は、卑怯だ。

「ハーピーは、俺はお前を置いていくんだぞ……」
「分かってるよ。知ってる。でも、今はルートとこうしていたい」

ぎこちなく俺を抱きしめるユノの体温と自分の体温が溶け合う。
紡がれる言葉に、伝わる体温に、ひどく安心する。
生きてる。それだけで全てに感謝できる気がした。

「ユノ……」
「ん、何……っ!?」

合わせた唇から漏れる声さえ愛しい。
一分一秒も無駄にしたくなかった。
腰に手を回して、きつく抱きかえす。
苦しそうに目をつぶったユノが可愛く見えた。

「はぁっ……」
「……」
「何するのよ……」

呼吸の整っていない声音で抗議しても説得力も何もない。
唇が微かに触れあう距離で、見つめあう。
上気した頬に少し拗ねた瞳。これさえあれば、もう何も怖くない。

「こうするの嫌か?」
「……ルートの意地悪」

あぁ、今日はぐっすり眠れそうだ。





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後半5つはシリアス。そして、ちょっと甘く。
人様の作品をラブラブしくするのは、恥ずかしいっ! (特に最後)
甘くて、甘酸っぱくて、ごめんなさいっ!