御史台・秀麗の部屋、夜


<秀麗>
「ちょっ……」
<清雅>
「何だ?」

私の反応を試すように触れる。
首筋に、耳に、顎に沿って。
そのたびに固まる私を楽しんでいるかのように背後から笑い声が響く。

<秀麗>
「あんた……楽しんでるでしょ?」
<清雅>
「……何のことだか」

しらばっくれても無駄だ。その顔が全てを語っている。
私の反応が楽しくてたまらない。
もっと反応してオレを楽しませろ。
そんな傲慢で自分勝手な意思が、空気中に滲んでいるようだった。

<清雅>
「ほら、出来たぞ」
<秀麗>
「あ……」

押し付けられた鏡を覗いて、絶句する。

<秀麗>
「……」
<清雅>
「感動して声も出ないって奴か?」
<秀麗>
「……そんなわけないでしょ」

完璧だ。私が私じゃないみたいに、とても綺麗に見える。
むかつく程に私を良く分かってる。

<清雅>
「まぁ、上出来だな」
<秀麗>
「っ……!?」

唇が触れた一束が燃えるように熱い。
髪に感触なんてないはずなのに、何故か柔らかいと。そう感じた。

<清雅>
「顔、紅いぜ?」
<秀麗>
「ううるさいわねっ、放っておいて」

反論なんて出来るはずがなかった。 



※このサンプルは完成版では、かなり変更する可能性があります。