けれど
優しさだけじゃ生きていけなかった
『二人で妓楼に行ってこい』
――冷徹で冷酷な上司 御史台長官 皇毅
『だって君に会いたかったんだ。しょうがないよ』
――神出鬼没で掴み所のない 門下省次官 晏樹
その冷たさにゆっくりと
惹かれていって
「暇なんだろ? なら相手してやるって言ってるんだ。時間なんてあっという間だぜ」
「お生憎サマ。清雅にあげる身体なんてひとつも持ち合わせておりません」
「いつも有り難う。感謝してるわ」
「それは、どうも……」
その時折見せる弱さを
包み込む強さを手に入れたかった
「お前なんかにオレの気持ちが分かるはずもない」
「当たり前でしょっ」
「まったく仕方のないお姫様だ」
「え、あ、晏樹様っ」
絶対に恋なんてしない
そう思っていたのに……
「いつか追い越すわよ」
「……いいぜ。でも、忘れるなよ。オレも毎日着々と進んでいることに」
さて、愛を知らない二人の恋の話をしようか