あなたと片恋#5

3.別離




「ほら、押さないで」
「つめて、つめて! ほら、麻耶も」

そう言って手を引っ張られ、私も列の中心へ急ぐ。
本当は死んでも近くに寄りたくなかったのだが、仕方がない。
これも人付き合いだ。一緒にすることに意義があるのだろう。

列の最上段、花段に上る。
この位置からだと、あなたの後ろ姿がよく見えた。

純白のネクタイにスーツ。
白すぎるシャツは、あなたの黒髪に綺麗に映えて。
それを見て、たくさんの感情に襲われる。
もう私の手はあなたに届かないのだと、まざまざと見せつけられているような気がした。

あぁ、私はもうあなたを手に入れられないのか。
それなら私は、いまこの世に生きている価値すらない。

あなたが全てで。あなたが世界の中心で。
そうやって、あなたを愛していたのだ。
それも今日で終わる。

さようなら。さようなら、愛しい人。
どうか。どうか、幸せでいて。

「……麻耶!? どっ、どうして泣いてっ」
「……ごめん。なんか感極まっちゃって」

突然、泣き出した私に隣にいた友人たちがぎょっとした顔をする。
それに必死に平然を装っても、涙が止まらない。
こんなみっともない私に、あなたが気づかないことだけを祈った。






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2009.02.21